IPoEとPPPoEの違い — なぜIPoEは速い?仕組みを図解で解説
IPoEとPPPoEの違い — なぜIPoEは速い?仕組みを図解で解説
結論ファースト
PPPoEは「混雑する料金所を全員が通らなければならない」古い接続方式。IPoEは「ETC専用ゲートで料金所をスキップする」新しい接続方式です。
夜間にネットが遅くなる人の多くはPPPoE接続が原因で、IPoEに切り替えるだけで速度が大幅に改善するケースがあります。切り替えはプロバイダへの申し込み(多くの場合無料)と対応ルーターの用意で可能です。
PPPoEとIPoEの違いを図解で理解する
ネット回線の「速度」は、回線のスペック(1Gbps等)だけで決まるわけではありません。**回線とインターネットの「繋ぎ方」**が大きく影響します。この「繋ぎ方」がPPPoEとIPoEです。
PPPoE接続の仕組み
PPPoEでは、ユーザーの通信はプロバイダの設備である**「網終端装置」**を必ず経由します。
ユーザー → NTTネットワーク → 【網終端装置(ボトルネック)】→ プロバイダ → インターネット
:::term[網終端装置] プロバイダとNTTのネットワークの接続点にある設備。PPPoEではすべての通信がここを通るため、利用者が増えると渋滞が発生します。各プロバイダごとに設置されており、処理能力には上限があります。 :::
IPoE接続の仕組み
IPoEでは、網終端装置を通らずに、VNE(仮想ネットワーク事業者)を経由して直接インターネットに接続します。
ユーザー → NTTネットワーク(NGN)→ VNE → インターネット
※網終端装置をスキップ
:::term[VNE(Virtual Network Enabler)] IPoE接続を提供する事業者。NTTのNGN(次世代ネットワーク)から直接インターネットへのアクセスを提供します。代表的なVNEにはJPNE(v6プラス)、MFEED(transix)、アルテリア・ネットワークス(クロスパス)などがあります。 :::
高速道路にたとえると、PPPoEは「すべての車が料金所のゲートを1台ずつ通過する」方式で、IPoEは「ETCでノンストップ通過する」方式です。道路(回線)の幅が同じでも、料金所の通し方が違えば渋滞の起こりやすさがまるで変わります。
なぜPPPoEは夜に遅くなるのか
PPPoEが夜間に遅くなる仕組みは明確です。
網終端装置の処理能力に上限があるためです。夜間の19〜23時はインターネットの利用者が集中するゴールデンタイムで、網終端装置が処理しきれずに渋滞が発生します。
NTT側の設備増強は各プロバイダからの要請ベースで行われるため、即座に解消されるわけではありません。特にユーザー数が多いプロバイダや、設備増強に消極的なプロバイダでは、夜間の速度低下が顕著に出ます。
具体的な数字で見ると、PPPoE環境では日中に200〜300Mbps出ていた速度が、夜間には10〜50Mbps程度まで落ちることがあります。動画がカクつく、Zoomが途切れるといった症状はこの渋滞が原因であるケースが多いのです。
IPoEが速い理由 — 技術的な仕組み
網終端装置を通らない
IPoEが速い最大の理由は、網終端装置というボトルネックを物理的に回避することです。
IPoEでは、NTTのNGN(Next Generation Network)から直接VNEを経由してインターネットに抜けます。網終端装置を通らないため、夜間の混雑の影響をほとんど受けません。
IPv4 over IPv6 — 古いサイトも問題なく見られる
「IPv6にするとIPv4のサイトが見られなくなるのでは?」と心配される方がいますが、現在のIPoE環境ではIPv4 over IPv6という技術が使われており、IPv4のサイトも問題なくアクセスできます。
IPv4 over IPv6の実装方式としてはMAP-EとDS-Liteの2種類がありますが、ユーザーが意識する必要はありません。対応ルーターが自動で処理してくれます。
:::tip[ポイント] 「IPv6にするとIPv4のサイトが見られなくなる」は過去の話です。現在はIPv4 over IPv6技術が標準で、IPv4サイトもIPv6サイトもどちらも問題なく閲覧できます。 :::
主なIPoEサービスの比較
IPoE接続は、どのVNE(仮想ネットワーク事業者)を経由するかでサービス名が異なります。ただし、体感速度に大きな差はなく、どのサービスでもPPPoEより大幅に快適になります。
| サービス名 | 提供VNE | IPv4 over IPv6方式 | 採用プロバイダ例 |
|---|---|---|---|
| v6プラス | JPNE | MAP-E | GMOとくとくBB、So-net、@nifty等 |
| transix | MFEED | DS-Lite | IIJmio、enひかり等 |
| クロスパス | アルテリア・ネットワークス | DS-Lite | 楽天ひかり等 |
| OCNバーチャルコネクト | NTTコミュニケーションズ | MAP-E | OCN等 |
| v6コネクト | JPNE | MAP-E | ASAHIネット等 |
MAP-EとDS-Liteの違いは気にする必要がある?
一般的な使い方であれば、MAP-EとDS-Liteの違いを気にする必要はほぼありません。
ただし、テレワークで**VPN(仮想専用通信)**を使う方は注意が必要です。MAP-E方式ではVPNの一部プロトコル(特にIPsec)が使えない場合があります。DS-Lite方式ではVPNへの影響が少ない傾向があります。
会社からVPNの利用を求められている方は、事前にプロバイダのサポートに確認することをおすすめします。
自分の接続がPPPoEかIPoEか確認する方法
現在の接続方式は簡単に確認できます。
- v6test.jp にアクセス → 接続方式(PPPoE / IPoE)とIPv6の対応状況が表示される
- 確認君+(env.b4iine.net)にアクセス → プロバイダ名と接続情報が表示される
- プロバイダのマイページで確認 → IPv6オプションの利用状況を確認
PPPoE接続だった場合は、IPv6(IPoE)オプションへの切り替えを検討しましょう。多くのプロバイダで無料で申し込めます。
→ 具体的な切り替え手順は『IPv6の対応確認と設定手順』で主要プロバイダ別にまとめています。
プロバイダがわからない場合は、まず回線の確認から始めましょう。
よくある質問
IPoEに切り替えるとVPNが使えなくなる?
MAP-E方式では、一部のVPNプロトコル(IPsec等)が制限される場合があります。DS-Lite方式ではVPNへの影響が比較的少ないです。テレワークでVPNを使う場合は、利用中のプロバイダのIPoEサービスがどの方式かを確認してください。
なお、WireGuardやOpenVPN等のVPNソフトはMAP-E環境でも動作するケースが多いため、「IPoEにしたらVPNが一切使えない」というわけではありません。
PPPoEとIPoEは同時に使える?
プロバイダによっては、PPPoEとIPoEの両方を同時に使えるデュアルスタック設定が可能です。通常のインターネット利用はIPoE(高速)で、VPN等の特定用途だけPPPoE経由にする使い分けができます。ただし設定にはネットワークの知識が必要です。
IPoEにするとプロバイダを変える必要がある?
ほとんどの場合、プロバイダを変える必要はありません。今のプロバイダでIPv6(IPoE)オプションを有効にするだけです。ただし、一部の古いプロバイダではIPoEに対応していないこともあります。その場合はプロバイダの変更を検討してもよいでしょう。
光コラボ(ドコモ光、ソフトバンク光等)の場合、プロバイダの変更方法が通常と異なります。
→ 『光コラボとは?フレッツ光との違い』
まとめ
PPPoEが遅いのは「混雑する料金所」を通るから。IPoEが速いのは「ETC専用ゲートで料金所をスキップする」から。この違いが、特に夜間の速度に大きな差を生みます。
回線を変えなくても、接続方式をPPPoEからIPoEに切り替えるだけで速度が数倍になるケースは多いです。まだPPPoEのまま使っている方は、IPv6(IPoE)への切り替えを検討してみてください。
→ IPv6の基礎知識は『IPv6とは?遅い回線が速くなる仕組み』
→ 具体的な確認・設定手順は『IPv6の対応確認と設定手順』
→ 回線の基礎知識の全体像は『光回線・ホームルーター・モバイルWi-Fi 何が違う?』
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